司法書士望月賢治の「ナイスアプローチ!」│望月司法書士事務所

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負担付贈与とみなされないために~貸家の贈与と敷金~

負担付贈与とは?

負担付贈与とは、贈与者(あげる側)が受贈者(もらう側)に
一定の債務を負担してもらうことを条件に行う財産の贈与をいいます。

金融機関からのローンで購入した賃貸アパートを
ローン付きのまま贈与するようなケースです。

負担付贈与の税務上の取扱い

受贈者側に対する課税

負担付贈与の場合、もらった側にとっては「贈与財産の価額」から「負担額」を除いた金額が実質的な経済的利益になりますので、贈与税の計算式は、

( 贈与財産の価額 - 負担額 - 基礎控除110万円 )× 贈与税率

となります。

贈与者側に対する課税

負担付贈与をした側にとっては、財産をあげた代わりに債務の負担が消滅したわけですから、実質的に「負担額」相当額で財産を譲渡したことと同じです。

したがって、「負担額」を売却代金とみなして譲渡所得税・住民税が課税されることになります。

単純に貸家を贈与しただけでは「負担付贈与」に該当してしまう

賃貸アパートなどの貸家を贈与しようとする場合、入居者から敷金を預かっている場合が多いと思います。
敷金返還義務は贈与者から受贈者へ引き継がれることになり、受贈者側にとっては貸家をもらう代わりに敷金返還義務を負担する「負担付贈与」を受けたことになります。

つまり不用意に貸家を贈与すれば、贈与者に所得税が課税されるかもしれないのです。

敷金相当額の現金を贈与すれば「負担付贈与」を回避できる

このような場合、贈与者が預かっている敷金相当額の現金を同時に受贈者に贈与して
実質的に負担額をなくすことで、「負担付贈与」としての取扱いを回避することができます。

 

無人航空機レベル4!

不動産屋で働いておられる方(専務)とのお話。
専務は、仕事で使う時が来るかも知れないということで、
ドローンの講習を受けておられるとのこと。
ドローンを自在に操ることができるようになれば、普段目に届かないような写真や映像を撮れるようになって、HPに載せれば他社との差別化を図ることができるとおっしゃって
おられました。

ドローンなどの無人飛行には4つのレベルがあります。
レベル1:目視内での操縦飛行
レベル2:目視内での自動飛行
レベル3:無人地帯における目視外自動飛行
レベル4:有人地帯における目視外自動飛行

レベル1は空撮や橋梁点検など
レベル2は農薬散布や土木測量など
レベル3は、郵便局が郵便局間の輸送を実施
島への物資輸送
など実際に有効利用されています。

現在、レベル4は認められておりません。
そして今、このレベル4をできるように法整備が整えられているべく、
国土交通省が動いているみたいです。

レベル4が実現されれば、トラック中心の物流に革命が起こりそうですね。

専務としては、レベル3までできるようになれば仕事に十分に使えると考えておられるようです。

これからの無人飛行、目が離せません。

デジタル遺産の相続

デジタル遺産の相続を考えないといけない時代がきました。

これまでの相続財産と言えば、
預貯金・不動産が代表的なものでした。
が、これからの時代、デジタル遺産も相続の対象として
考慮に入れておかないといけません。

デジタル遺産とは、
オフラインのデータ:パソコン・スマートフォン・デジカメ等などの
あらゆるデジタル機器内のデジタルデータ
オンラインのデータ:暗号資産、NFT、SNSアカウント、動画サイトアカウント、
WEBサイトアカウント及びそれらアカウントに蓄積されたデータ

暗号資産とは? 例えばビットコインですね。相続財産として考えやすいです。
NFTとは? 非代替性トークンの略で、デジタルアート・ゲームアイテム・トレーディングカードなどです。〇十万円課金して手にしたゲームアイテム、〇百万円で売買されているトレーディングカードなどは価値がありますよね。
SNS等のアカウントとは?企業案件や広告収入、投げ銭機能などです。

これらのデジタル遺産を承継するのか、消去・処分するのか、
遺言できっちり定めておいた方がいいかもです。

またSNSアカウントは相続の対象になり得るのか、一身専属的なものなのか。
例えば著名なユーチューバーが亡くなった時、そのアカウントはどうなるのか?

デジタル遺産の相続は始まったばかりで、これから色々な事例が出てくると思います。

自分の相続分の預貯金の払い戻しを銀行に請求できるか?~預金の仮払い制度~

遺産分割協議が成立する前に、自分の法定相続分の預貯金の払い戻しを、
銀行に請求できるのでしょうか?

従来の取扱いは、預貯金は当然に分割され、遺産分割に含まれないので、
請求できるとされてました。
実務的には、銀行に払戻を請求しても、「相続人全員分の実印と印鑑証明書」が
求められますが、訴訟を起こされれば、銀行は、一人の相続分の預金の払い戻しに応じてきました。

平成28年12月19日の最高裁判決により、民法909条の2が新設され、
令和元年7月1日より扱いが変わりました。(預金の仮払い制度の新設)
内容は以下のとおりです。
① 預貯金は遺産分割の対象となる
② 銀行から引き出せなくなった
③ 葬式費用など死後の債務が支払えない
④ 預金の仮払い制度の扱いにより、一定額を引き出せるようになった

一定額というのは、
相続財産の3分の1に対する自分の法定相続分です。
相続財産が1200万円で、相続人が子供二人だけなら、
1200×1/3×1/2=200万円です。
ただし、一つの金融機関毎に上限が150万円と定められています。

当事務所では、銀行口座の相続手続きのお手伝いもいたします。
面倒だ・時間がないという方、是非ご相談下さい。

相続? 生前贈与?

親から子に財産が渡るのは、通常「相続」ですよね。
現在、男性の平均寿命が81.47才、女性が87.57才と言われてます。
すると相続を受ける子供は60才台、場合によっては70才台になっているケースも出てきます。
この年齢で財産をもらった時、
子どもはお金がそんなに必要じゃないかも知れません。
その代わり、教育費用や住宅ローンなど何かと物入りで、まだまだ収入の伸びていない30~40才台は、お金をもらえるととても助かる場合が多いと思います。
「相続」で財産が渡るには高齢すぎるのが現状だと思います。

あるご高齢の方の遺言書の作成のお手伝いをした時です。
「もっと若い時にお金を使っておけばよかった」と。
「今、こんなに持ってても仕方がない」と。


お金を有効に使うにはタイミングがあると思います。


そこで生前贈与について真剣に考えてみる必要があると思います。

生前贈与のメリットその1 自分でコントロールできる

いつ死ぬかは分かりません。つまり相続の時期はコントロールできません。
しかし贈与なら、好きな時期を選ぶことができます。

生前贈与のメリットその2 直接感謝される

死んだ後に「ありがとう」と言ってもらっても、こちらの心には響きません。
ゴッホの絵は今でこそ評価されていますが、当の本人は知らないのと同じです。
やっぱり直接「ありがとう!」って言ってもらえるの、嬉しくないですか?

生前贈与のデメリットその1 もしもの時に備えられる?

贈与したのはいいが、病気や介護で多額の費用が必要になったらどうしよう?という心配はごもっともです。
人それぞれで何とも言えないですが、もし80才で不治の病が見つかっても寿命と考えて余計な治療はしないかも知れません。
日本の介護環境は年々良くなってきてます。そしてその人の予算にあった介護を選択することもできます。
「もしもの時に備える」という意識は、そんなに高くなくてもいいかも知れません。

生前贈与のデメリットその2 贈与税

生前贈与で考えるべきは税金です。
贈与税、高いですよね。
しかし、直系血族の教育資金の贈与なら、贈与税の課税対象とはならないなど、贈与税を回避する方法もあります。
住宅なら、親が建てて、子供に使用貸借させて、遺言で相続させるなど。

色々な方法や対策があります。
私が参加している相続手続支援協会で、相続・贈与に詳しい税理士とタイアップしております。
ちょっと話を聞いて欲しいなという方はぜひご相談だけでもいかがでしょうか。

えっ!技術研究組合の登記?

数年来、神戸大学産官学連携本部関係の登記に関与させて頂いております。
先日、連携本部の方から、
「〇〇技術研究組合の代表理事の登記が更新されていないのでお願いします」
との依頼を受けました。

司法書士として登記のプロを自認しておりますが、
組合の登記の経験ははっきり言って少ないです。
まずは登記の根拠となる法文のチェックです。
びっくり棒人間

知りませんでした。
技術研究組合法」なる法律。
しかも昭和39年施行。
まあまあ古いやない

法律は全部で191条。
登記に関係ありそうな条文に目を通していきます。
総則:法人の特徴を知るために重要な条文です。
第13条:設立するには主務大臣の認可が必要
第17条:定款変更するには主務大臣の認可が必要
第21条:理事は3名以上 監事は1名以上
第22条:役員の住所・氏名に変更があった時は主務大臣に届け出
第25条:役員の任期は、理事は2年・監事は4年
ただし設立当初の役員は1年を超えてはならない
第31条:理事会で代表理事を選任する
などなど

本件法人は令和1年に設立されて、それ以後登記されていない法人なので、
第25条の、「設立当初の役員は1年を超えてはならない」という条文に
気を付ければ他の組合法人と変わりはなさそうです。

法人の登記簿や定款、議事録を頂戴し、登記に必要な押印書類の作成を進めていきます。印鑑

 

成年年齢の引き下げについて

2022年4月1日に成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。

この民法改正によって、18歳から親権者の同意を得ずに一人で有効な契約ができるようになったり、遺産分割協議に参加できるようになったりします。一方で、飲酒・たばこ・競馬など法改正前の20歳のままの年齢制限のものもあります。

以下、成年年齢の引き下げについて解説していきたいと思います。

           目次
1.どの時点で成年として扱われるようになるか
2.成年年齢に達すると何ができるようになるのか
3.飲酒・たばこ・競馬などの公営競技は18歳から解禁?
4.結婚できる年齢について
5.子の養育費について
6.その他いろいろ

1.どの時点で成年として扱われるようになるか
・2002年4月1日以前の生まれの人は、20歳の誕生日に成年に達します。
・2002年4月2日~2004年4月1日生まれの人は、
2022年4月1日午前0時に一斉に成年となります。
・2004年4月2日以降に生まれた人は、18歳の誕生日に成年に達します。
ハッピーバースデイ

2.成年年齢に達すると何ができるようになるのか
成年年齢に達すると一人で有効な契約をすることができるようになります。
例えば、親の同意を得ずに一人でクレジットカードを作ったり、ローンを組んだりす
ることができるようになります。
なお、2022年4月1日より前にした18歳・19歳の親の同意を得ずにした契約
については、法改正後であっても取り消すことは可能です。
クレジットカード

遺産分割協議に参加することはできるか?
2022年4月1日以降18歳以上であれば遺産分割協議に参加できるようになりま
す。

3.飲酒・たばこ・競馬などの公営競技は18歳から解禁?
飲酒・たばこ・競馬については、健康被害への影響・ギャンブル依存症対策などの観
点から年齢制限は今までの20歳のまま維持されます。
パチンコは法改正の対象外なので現状のまま18歳未満は禁止です。

4.結婚できる年齢について
法改正前の結婚できる最低年齢は女性が16歳、男性が18歳です。これは男女間で
心身の発達の違いのためであるとされていましたが、現代においては社会的及び経済
的な成熟度に男女に差異はないと考えられます。

そのため女性の婚姻開始年齢を高校卒業程度の18歳に引き上げ、男女ともに18歳
以上になると結婚することができるようになります。
なお2022年4月1日の時点で16歳に達している女性については18歳未満であ
っても結婚することができます。
法改正前では20歳に満たない者が婚姻した場合には、成年に達したものとみなす成
年擬制の規定がありました。しかし男女ともに婚姻適齢と成年年齢が同じ18歳とな
るため、成年擬制の規定は消滅することになります。

5.子の養育費について
「子が成年に至るまで養育費を支払う」との取り決めをしていることがありますが、
取り決めがされた時点では成年年齢が20歳であったことを考えると、たとえ成年年
齢が引き下げられたとしても、当然に「18歳に達するまで」になるわけではなく、
20歳まで養育費の支払い義務を負うことになると考えられます。

しかし今後、養育費の取り決めをする場合には支払期限については「20歳に達した
日が属する月まで」、「22歳に達した後の3月まで」など具体的に決めておくこと
をお勧めします。

6.その他いろいろ
・10年間有効のパスポートは18歳で作れるようになります。
・中型自動車運転免許証は今までどおり20以上にならないと取得できません。

法務省の民法を一部改正する法律についてのHPのアドレスです。
YouTubeやクイズもありますので参考にご覧になって下さい。

法務省:民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について 

 

外国人の会社設立

政情不安がささやかれているスリランカですが、
そのスリランカの方が日本で会社を作りたいというご依頼を頂きました。

スリランカの方が日本で起業というと、カレー屋さんかなと思ったりしましたが、
依頼者はスリランカで車の売買の会社を起業されており、日本でも同じように
車の売買の会社を設立するということでした。

勝手な思い込みすいません・・・kao-a10.gif

外国人が出資して日本で起業する場合、問題となるのが銀行口座です。
日本で会社設立する際、資本金を代表取締役の個人口座に振り込む必要がありますが、
来日前の外国人は銀行口座を取得することができません。

ではどうするか?

一つは、日本人の協力者を得てその日本人に代表取締役になってもらい、海外から日本人協力者の個人口座へ資本金を送金して、会社設立登記手続きを終わらせてから、在留資格を取得するという方法です。手続きとしては簡単ですが、信用できる日本人協力者を見つけることができるかどうかが問題ですね。

もう一つは、会社設立登記が済んでいなくても、定款など事業開始が明らかになる資料があれば在留資格の申請をできるような改正がなされており、その制度を利用する方法です。
具体的には、
①日本の公証役場で、定款認証手続きを受ける
②その定款を添付して「経営・管理」の在留期間4カ月の在留資格を取得する。
③在留カードを取得し、銀行口座を開設する。
④銀行口座に資本金を払い込み、会社設立登記を済ませる
⑤在留期間更新許可申請を行う。

今回は日本人協力者がいるので、一つ目の方法で進めることにしました。

公証役場の定款認証手数料について

株式会社設立に伴う公証役場での定款認証手数料は、
資本金の額に関わらず一律5万円でしたが、令和4年より以下のとおり
改められました。

資本金が100万円未満        手数料3万円
資本金が100万円以上300万円未満 手数料4万円
資本金が300万円以上        手数料5万円

一般社団法人・財団法人は対象となりません。

合同会社の役員追加のやり方

合同会社の役員追加には、2通りのやり方があります。

1つは、新たな出資をする方法、もう1つはすでにいる役員が出資している持分の一部または全部を譲り渡す方法です。
株式会社では出資者と経営者が分離していることに対し、合同会社では出資者と経営者が同じであることから、株式会社とは異なる役員の選任方法になります。

新たな出資をする方法では、役員変更登記と同時に資本金の額の変更登記も必要となります。持分を譲り渡す方法と比べて登記費用が大きくなってしまいます。

会社の実情に合わせて、役員追加の方法を検討する必要があります。