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カテゴリー別アーカイブ: 相続

一時払い終身保険を考える~遺留分対策~

父・母・長男・次男の4人家族。
父はすでに他界しております。
母の総資産は8000万円で、その全額を長男に遺そうと思っています。
そうすると次男の長男に対する遺留分が2000万円となります。

そこで母が「一時払い終身保険」に加入します。
これは母が90歳まで加入できる保険です
(加入できる年齢は保険会社によります)
2000万円分を一時払いしたとしましょう。
契約者は母、受取人は長男です。

母が亡くなった時、長男が死亡保険金として2000万円を受け取ります。

保険に加入しなければ、弟の遺留分請求権は2000万円でした。
ところで、2000万円分の保険に加入することで、母の相続財産は6000万円になっています。
(長男が受け取った2000万円は長男固有の財産とみなされます。)
なので、弟の遺留分請求権は1500万円となります。
保険に加入することで、遺留分の現金を準備することができると同時に、
遺留分の額も減らすことができるということになります。

保険は相続税の控除にも使えますし、是非検討すべき相続対策ですね。

配偶者居住権 メリットとデメリット

登場人物 父・母・子
父が自宅所有 家の価値が2000万円とします。
これでお父さんが亡くなった場合

配偶者居住権のメリット
お母さんが、法定相続分で、お金をより多くもらえることです。
配偶者居住権の財産価値は、お母さんの年齢により平均余命を勘案して決められます。
例えばお母さんが、
65歳なら半分くらい(約1000万)
80歳なら30%くらい(約600万)
90歳なら15%くらい(約300万)
これを無償で相続するので、
お母さんが家を配偶者居住権で相続すると、より多くのお金を相続できるということになります。

配偶者居住権のデメリット
1.認知症対策
配偶者居住権は登記されます。もしこの家を売却する必要が出てきた場合、この配偶
者居住権をお母さんが放棄し、登記を抹消する必要があります。この時、もしお母さ
んが認知症だった場合、配偶者居住権を放棄して、抹消登記をすることができなくな
り、家の売却手続きが進まなくなってしまいます。

2.税務上の問題
お母さんが配偶者居住権を放棄した場合、配偶者居住権分の価値を子がお母さんから
贈与を受けたという考え方になると思います。
まだ事例がないので何とも言えませんが、贈与税が発生する可能性はあります。

いずれにせよ、不動産を売却する可能性がある場合、配偶者居住権には注意が必要かもですね。

遺言書必要度チェック

7月10日から法務局で遺言書を預かってもらえる制度が始まります。
遺言が必要かどうか、検討してみてはいかがでしょうか。

遺言必要度チェック
□ 子どもがおらず、配偶者に遺産を全部のこしたい
□ 特定の相続人に財産をのこしたい
□ 相続人以外の世話になった人に財産をのこしたい
□ 残される配偶者に配偶者居住権を設定したい
□ 内縁関係のパートナーに遺産をのこしたい
□ 相続人がいない、または大勢いる
□ 離婚した相手との間に子どもがいる
□ 再婚した相手に子どもがいる
□ 認知したい子どもがいる
□ 相続人の仲が良くない、または疎遠である
□ 財産が多い(不動産を複数所有している)
□ 相続人のなかに音信不通、行方不明の方がいる
(以上日本司法書士連合会より)

法務局における遺言書の保管について

法務局における遺言書の保管制度が令和2年7月10日から始まります。

そこで、この遺言書の保管制度について概略をまとめておきたいと思います。

1.費用について
① 遺言書の保管の申請     1件につき3900円
② 遺言書の閲覧        1回につき1700円
③ 遺言書情報証明書の交付   1通につき1400円
④ 遺言書保管事実証明書の交付 1通につき800円

2.手続について
① 申請は、遺言者のみが行うことができます。
② 管轄は、遺言者の住所地・本籍地・不動産所在地となります。
③ 住所や本籍地、内容に変更があった場合には、その旨届け出る必要があります。
④ 遺言者の死亡後は、関係相続人は閲覧や証明書の請求ができるようになります。
逆に、遺言者が生存中、関係相続人は閲覧などができないということになりま
す。

3.保管期間について
遺言者の死亡の日から相続に関する紛争を防止する必要があると認められる期間。
① 遺言書の保管については、50年
② 遺言書に係る情報の管理については、150年。
③ 遺言者の生死が明らかでない場合には、出生の日から120年。

また詳細が分かり次第、お伝えしていきます。

死後事務委任契約の作成

死後事務委任契約書を公証役場にて作成しました。

死後事務委任とは、依頼主の死後のあらゆる事務手続きを
ある人に委任しておく契約です。

子どもなどの相続人がいれば特に作成する必要もないかと思います。
相続人がいない場合、代わりに動く人間が必要となりますが、
相続人でない人間が動く場合、特に対役所などではいろいろと
不都合が多いように聞きます。

そこで死後事務委任契約書を作成しておけば、言わば委任状と同じなので、
ストレスを感じることなく、相続手続を進めることができるというわけです。

金融機関の相続手続き

5月の連休明けに金融機関の預貯金・有価証券の相続手続の
依頼を受けました。
被相続人が亡くなったのが10月初め。
相続税の納税が8月初めまでだから急いでやって欲しいとのこと。
今まで何やってたんだと嫌な雰囲気を感じながら、話を聞いていると、
被相続人は遺言書を作成していたとのこと。
そして遺言執行者として信託銀行を指定していたとのこと。
ただ相続人間で揉めていたので、その信託銀行が執行者の地位を辞退したとのこと。

信託銀行って、辞退しちゃうんですね~。
すごいというか、ドライというか。ある意味、感心してしまいます。

さて、急いでやらないといけないということで、早速各金融機関の窓口へ相談に。
遺言執行者でもない、親族でもない人間が、「司法書士」という資格だけで動くのは
なかなか面倒なのですが、「相続手続代理人」という名目で、各金融機関の協力を
頂きながら何とか手続を完了させることができました。

銀行の手続はそんなに時間はかかりませんが、証券会社は、株式の移管手続やら、
相続人の口座開設やら、何かと手続があり、時間がかかるので注意が必要です。

相続税対策としての贈与~3年内加算ルール~

相続税をちょっとでも少なくしようと思い、生前贈与をするご家庭はたくさんあると思います。
贈与税の控除額が110万円あるので、それを利用して時間をかけて贈与していく方法ですね。
しかしながら相続税法では、生前贈与をしてから3年以内に、その贈与した方が亡くなってしまった場合には、その贈与はなかったことにされます。
つまりこの間に行われた生前贈与で渡した財産については、亡くなった時の財産に足し戻して相続税を計算しなければいけないのです。
3年経過しないと節税の効果は一切でてこないということになります。
生前贈与をするのであれば、お元気な時に早い内から始めるのが重要ですね。

実はこの3年内加算のルールは、誰に対しても適用されるわけではありません。
適用される人は「相続人」と限定されています。
なので、相続人ではない「孫」への贈与は、3年内加算のルールは発動しません。
あとはお婿さんやお嫁さん(子供の配偶者)も適用外です。
離婚しちゃったら、返ってきませんけど・・・

ちなみに孫でも3年内加算のルールに引っかかる場合があるので注意が必要です。
一つは遺言書で孫に財産を遺す場合。
もう一つは生命保険で孫に保険金が出る場合。

なお、生前贈与は、その人が認知症になってしまったらすることができなくなります。
相続税の対策よりも緊急度、重要度が高いのは、認知症対策だと思います。
当ホームページの民事信託欄に認知症対策としての家族信託をご案内しておりますので、気になる方は是非参照下さい。

自筆証書遺言の方式緩和

自筆証書遺言の方式緩和が2019年1月13日から始まりました。

緩和のポイントは、
「財産目録」については代筆やパソコンによる作成が可能になった
ということです。
登記事項証明書や預金通帳のコピーを添付する方法も可能です。

添付した財産目録の各ページに署名と押印が必要となります。
財産目録が両面にある場合には、その両面共に署名・押印が必要です。
契印は必要ないとのことです。

少し先の話ですが、2020年7月10日から
自筆証書遺言が法務局で保管される制度が始まります。
保管制度を利用した自筆証書遺言は裁判所の検認が不要
の扱いになるということです。

海外在住日本人の遺産分割協議書への押印手続き

尼崎市内の不動産の相続登記の事案です。
アメリカ在住の日本人の方から相続登記手続きのご依頼を受けました。

遺産分割協議書には署名と実印の押印をし、印鑑証明書を添付します。
ところがアメリカ在住で日本に住所がない場合、印鑑証明書の交付を受けることができません。

本件の場合、依頼人が日本に一時帰国することになったので、
公証役場にて署名証明を受けることによって、印鑑証明書に代える手続きをとりました。

 

 

韓国籍の方の法定相続情報取得について

運用開始から1年。
法定相続情報もかなり実務に浸透してきているように思います。

先日、現在は帰化されている、元韓国籍の方から法定相続情報の取得を
依頼されました。

法定相続情報は取得できるのでしょうか。

答えは、「取得できない」です。

法定相続情報を取得できる条件として、
出生から死亡時までの戸籍を集める必要がありますが、
その戸籍が全て日本の戸籍である必要があるためです。
そしてそれは帰化された方や、相続人に韓国籍が含まれる場合も利用不可なのです。

ただでさえ取得が困難な韓国の戸籍にこそ適用してほしい制度ですが・・・
法務局には荷が重いということなのでしょうか。