司法書士望月賢治の「ナイスアプローチ!」│望月司法書士事務所

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夏季休暇のお知らせ

残暑見舞い申し上げます。

誠に勝手ながら、弊所の夏季休暇を下記のとおりとさせて頂きます。
ご迷惑おかけしますが、よろしくお願い申し上げます。

夏季休暇期間
8月7日(月曜日)~8月13日(日曜日)

強迫による意思表示の取り消し

不動産を数多く所有されている方からの相談です。

東京の業者から、マンションの1室を売却しないかという電話がありました。
話だけでも聞いてみようということで、会うことになりました。

値段が折り合わず、相談者は不動産の売却を断ろうとしたのですが、
業者の担当者に、「契約するまで帰らない」とすごまれ、その場は
仕方なく契約書にサインをしてしまいました。

後日、相談者から電話があり、
「やはりあまりにも安すぎるので、契約を解除したい」旨の相談がありました。
相談を受けた時点で、クーリング・オフの期間は過ぎていました。
そこで民法96条「強迫による意思表示は取り消すことができる」ことを
内容証明郵便をもって主張したところ、無事解約をすることができました。
あまりにあっさりと解約に応じたので、逆にびっくりしました。

いけいけな業者だったのでしょうね。
やったもん勝ちな世の中にはしたくありません。

賃貸物件がゴミ屋敷になってしまった

賃貸物件がゴミ屋敷になってしまった。
どうすればいいのか?という相談が家主さんからありました。

・家主が何度注意しても、ゴミを片付けようとしない
・隣室があまりの悪臭に耐えかね出て行った

相当ひどい状態だと思われます。

「賃借人は賃貸人に対し、賃借物件を明け渡すまで、善良な管理者の
注意をもって保管しなければならない」という善管注意義務なるものが
賃借人は課せられています。

賃借人はこの善管注意義務に違反しているのですが、違反している
からといって、直ちに家主がゴミを片付けていいわけではありません。

期限を区切ってゴミを片付けるよう内容証明郵便をもって通知し、
何もしなければ、建物明渡訴訟を申し立てることになります。

手続きには数ヶ月時間がかかってしまいます。
今から夏本番。
さらなる環境悪化が心配されます。

代理人による実印の登録について

相続手続きのご依頼を頂戴しました。

相続が開始すると、金融機関や不動産の名義変更の手続きを
する必要があります。

そこで必要となるのが相続人の実印と印鑑証明書です。
実印と印鑑証明書がないと進まない手続きが多くあります。

実印登録をしていない場合、管轄の役所へ行って実印登録を
するわけですが、本人が身分証明書を持っていけば簡単に
できます。

本人が平日忙しくてなかなか役所へ足を運ぶことができない場合、
代理人によって実印登録の手続きをすることができます。
息子の実印登録をお母さんが代理してする場合、
①お母さんの認め印と身分証明書、実印登録する息子の印鑑、
  実印登録申請書と委任状を持って役所へ申請する。
②役所から息子へ照会書が届く。
③その照会書とお母さんの認め印・身分証明書と息子の実印を
  もって再び役所へ行く。
④実印登録完了。
となります。

印鑑カードを交付してもらえるので、印鑑証明書を取得する
ことができるようになります。

韓国籍の相続登記~外国人登録原票の取得~

最近取り扱った、韓国籍の方の相続登記のお話です。

まず韓国から戸籍謄本を取り寄せることから始めます。
取り寄せた戸籍はハングル文字なので、それを翻訳します。
それで相続人が確定できたら、あとは日本人の相続手続きと
同様に、遺産分割協議書などを作成して、登記申請します。

さて今回のケース。
取り寄せた戸籍だけでは相続人が確定できませんでした。

そこで参考資料となるのが、外国人登録原票です。
外国人登録原票の記載事項に、
「世帯を構成する者(続柄・氏名・生年月日・国籍)」があります。
この記載事項をもって戸籍で不足していた情報を補うことができる
ケースがあります。

ところがこの外国人登録原票。法務省入国管理局で一括管理
されているので、取得するのに請求してから1カ月近くかかります。
急いでいる場合には注意が必要ですね。

所有権移転登記後の権利証書

AさんからBさんへ所有権移転登記を済ませたとします。
するとBさんの新しい権利証書が発行され、
Aさんが所有していた権利証書は用済みとなります。

ところがAB間の売買に何らかの錯誤があって、無効となってしまいました。
Bさんへの所有権移転登記を抹消することになります。
すると、一度用済みになったAさんの権利証書はその役割を取り戻します。

今日、お客さんの権利証書を事前確認していたのですが、
その権利証書がまさに上記のケースでした。
大切に保管されていたのですね。

権利証書をもう処分してしまったよ~という場合には、
司法書士による本人確認情報でもって権利証書に代えることになります。
別途費用がかかっちゃいますけど・・・

感情と意思決定 その5

4回に渡って、感情がその人個人に与える影響について紹介してきました。
今回は感情が他者との関係でどう働くのかを紹介していきたいと思います。

「公共財ゲーム」と呼ばれる研究です。
このゲームは、他者と協力する事で大きな利得が得られるものの、他者をあてにして自分が怠けたくなる状況(ただ乗り)をつくりだし、人間の行動を評価する事が可能なゲームです。 
5名でグループを作り、最初にそれぞれが10,000円を与えられます。そして、参加者それぞれが手持ちの10,000円の中から、いくらをグループのために支払うかを決定します。実験者はそれぞれが出し合った金額を合計し、その倍の金額を5名全員に均等に分配する、といった具合です。全員がたくさんの金額を支出すると、それぞれが得られるリターンもより多くなるものの、自分は支出せずに、つまりリスクを取らずにお金を儲けようとする戦略を取ることも可能です。

あるグループの実験参加者には素早く決断を下すように(10秒以内)、もう一方のグループの実験参加者にはゆっくり決断するように(10秒以上)指示がされました。その結果、素早く意思決定を求められる条件の方が、じっくり考える条件よりも、より多くの金額を支出する、すなわち協力的になることが示されました。

つまり自分が所属する集団の中では、人間は熟慮しなくとも、自ずと協力的になる自動的な感情の働きを備えているということです。

思いのほか、私たちは協力的で、他者との良好な関係を築くことに長けているのですね。

京都大学こころの未来研究センター 阿部修士淳准教授の寄稿より

感情と意思決定 その4

トロッコジレンマと歩道橋ジレンマの道徳的判断についての続きです。

生きた人間の脳活動を調べて、道徳的判断の際、脳のどの部分が活動するのかという研究があります。

トロッコジレンマ、つまり1人を犠牲にしてでも5人を助けようとする行為が比較的許容されるジレンマについての道徳的判断を行う時には、「背外側前頭前野」と呼ばれる領域の活動が確認されました。この領域は論理的思考や合理的判断に関わる領域で、「クール」な、なお言えば、「冷徹」な決断を導く処理をしたということになります。

一方、歩道橋ジレンマ、つまり1人を犠牲にしてでも5人を助けようとする行為が比較的許容されないジレンマについての道徳的判断を行う時は、感情の処理に関わると考えられる内側の前頭前野の活動が認められました。

歩道橋の上から自らの手で人を突き落とすという行為が感情を揺さぶるものであり、結果として意思決定に影響を与えるという研究結果から、「人間は合理的・理性的な存在である」という価値判断はもはや古い考えであると言わざるをえません。

つまり、理性の働きだけでなく感情が私たちの意思決定に作用する事で、より多くの道徳的判断を導きうるということです。

京都大学こころの未来研究センター 阿部修士淳准教授の寄稿より

感情と意思決定 その3

金銭の価値判断に関わる意思決定に続き、道徳的判断も感情に影響されてしまうという研究事例です。

以下はトロッコジレンマと呼ばれるものです。
制御不能になったトロッコが近付いており、このままだと5人の作業員が轢き殺されてしまう。あなたは線路のそばの分岐器の近くにいる。あなたがトロッコの進路を切り替えれば、5人は確実に助かる。しかし、切り替わる進路の先にも1人の作業員がおり、その作業員は轢き殺されてしまう。あなたが進路を切り替えることは、道徳的に許されるだろうか?それとも許されないだろうか?

これまでの研究からは、分岐器を使って進路を切り替える、つまり1人を犠牲にしても5人を助けようとする行為が道徳的には許容される、と判断する方が多数派であることが知られています。
もちろんこうしたジレンマに正解などなく、多数派だからといってそれが正しいとは言えません。ここでの重要なポイントは5人を助けようとする意思決定を行うのが多数派であるということです。

次はどうでしょう。歩道橋ジレンマというものです。
制御不能になったトロッコが近付いており、このままだと5人の作業員が轢き殺されてしまう。あなたは線路の上の歩道橋に立っており、そばに体の大きなAさんがいる。Aさんを突き落とせばトロッコは確実にとまり、5人は助かるがAさんは死んでしまう。あなたがAさんを突き落とすことは、道徳的に許される?許されない?

これまでの研究からは、先ほどのトロッコジレンマとは異なり、1人を犠牲にして5人を助けることは道徳的に許されないと判断する人が多いことが知られています。

どちらのジレンマも、1人を犠牲にして5人を助けるかどうかを選択するという意思決定場面です。にも関わらず、なぜトロッコジレンマと歩道橋ジレンマで、私たちの道徳的判断は変わってしまうのでしょうか?

続きはまた明日。

京都大学こころの未来研究センター 阿部修士淳准教授の寄稿より

感情と意思決定 その2

人間の意思決定が決して合理的なものでなく、感情を含めた無意識で自動的な情報処理の影響を受けるものであるとした実験として「プロスペクト理論」があります。

以下の二種類のくじのどちらかを引かないといけないとしたらどちらを選択しますか?
① 確実に7万円をもらえるくじ
② 70%の確率で10万円もらえるが、残りの30%の割合で
  何ももらえないくじ

こうした二択では、①と答える人が多数派です。

次の二択。
① 確実に7万円の罰金を払うくじ
② 70%の確率で罰金は10万円になるが、残りの30%の
  確率で罰金がゼロになるくじ

こうした場面では損失が0になる②の方に賭けてしまいがちであることが知られています。

私たち人間は利益を確定させ、損失を回避しようとする選択を行う傾向にあります。
この傾向は「損失回避性」と呼ばれます。
私たちは、同額の利益と損失では損失の方を過大評価する傾向があり、
損失を回避しようとする動機が強く働きます。
そしてこの傾向は、論理的思考や合理的判断によって生まれるものではなく、感情に由来していることが種々の実験から分かってきています。

こうした損失回避性は、進化の歴史に由来する可能性が指摘されており、
好機よりも脅威に対してすばやく対応する生命体の方が、生存の可能性が
高まるという解釈からは、なるほどと納得させられます。

京都大学こころの未来研究センター 阿部修士淳准教授の寄稿より