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カテゴリー別アーカイブ: 不動産登記

配偶者居住権 メリットとデメリット

登場人物 父・母・子
父が自宅所有 家の価値が2000万円とします。
これでお父さんが亡くなった場合

配偶者居住権のメリット
お母さんが、法定相続分で、お金をより多くもらえることです。
配偶者居住権の財産価値は、お母さんの年齢により平均余命を勘案して決められます。
例えばお母さんが、
65歳なら半分くらい(約1000万)
80歳なら30%くらい(約600万)
90歳なら15%くらい(約300万)
これを無償で相続するので、
お母さんが家を配偶者居住権で相続すると、より多くのお金を相続できるということになります。

配偶者居住権のデメリット
1.認知症対策
配偶者居住権は登記されます。もしこの家を売却する必要が出てきた場合、この配偶
者居住権をお母さんが放棄し、登記を抹消する必要があります。この時、もしお母さ
んが認知症だった場合、配偶者居住権を放棄して、抹消登記をすることができなくな
り、家の売却手続きが進まなくなってしまいます。

2.税務上の問題
お母さんが配偶者居住権を放棄した場合、配偶者居住権分の価値を子がお母さんから
贈与を受けたという考え方になると思います。
まだ事例がないので何とも言えませんが、贈与税が発生する可能性はあります。

いずれにせよ、不動産を売却する可能性がある場合、配偶者居住権には注意が必要かもですね。

配偶者居住権

令和2年4月1日以降に発生した相続について、配偶者居住権制度が開始しました。

被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合、
その居住していた建物の全部について無償で使用及び収益をする権利を取得するとされました。これが配偶者居住権です。

ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあってはできないなどの条件があります。

そして配偶者居住権の登記もできるようになりました。
権利者:配偶者、義務者:建物所有者とする共同申請です。

自己借地権の登記

A所有の土地に、Aを借主とする借地権(自己借地権)を設定して登記をすることはできません。

そしてA・B共有の土地に、BがA持分のみに借地権を設定して登記することもできません。この場合は土地を分筆して登記をすることになります。

例外的に自己借地権が認められる場合があります。
借地借家法15条に基づく場合です。
要件は以下のとおりとなります。
① 建物の所有を目的とすること
② 他の者と借地権を共有すること

利益相反 取締役会議事録の作成

代表取締役が個人で所有している不動産を、会社が購入する事案です。
ちなみにこの会社は、取締役会設置会社です。

代表取締役と会社が直接取引する場合、会社法365条により、
取締役会での承認決議が必要となります。

会社の役員構成
代表取締役 A
取 締 役 A B C D E F

1.取締役会決議には何名以上参加すればいいでしょうか。
法律では、「議決に加わることができる取締役の過半数が出席し」
とあります。
代表取締役Aは議決に加わることができません。
よって残りの5名の過半数である、3名以上の出席が必要となります。

2.次に決議に参加した取締役のうち、何名以上の賛成が必要でしょうか。
法律では、「出席した取締役の過半数をもって行う」
とあります。
よって3名が参加していれば2名以上の、5名全員が参加していれば3名以上の
賛成が必要となります。

3.取締役会議事録への押印について
決議に参加した取締役は実印を押印し、印鑑証明書を添付します。
なお、代表取締役Aが参加している場合は、Aの押印は会社の実印と
会社の印鑑証明書を添付することになります。

この案件を頂いたとき、税理士が取締役会の議事録を作成していのですが、
監査役が決議に参加しておりました。
この会社の監査役の権限は会計に関するものに限定されていたため、
そもそも決議に参加することができず、承認決議する人数にもカウントされません。
この監査役をカウントしないと、有効な決議にならなかったため、
慌てて議事録を作成し直したというおまけ付の事案でした。

第2回信託実践研究会に参加してきました

昨日、株式会社トータル財務プラン様が主宰される
「信託実践研究会」に参加してきました。

信託・任意後見・成年後見・遺言などの手続きのメリット・デメリット、
対費用効果など実務の観点から非常に役立つ研究会となりました。

特に信託は、実務・登記・判例の洗礼を受けていない制度なので、
不確実なところがあるのは避けがたいのですが、
とても魅力的な制度ですので、利用しない手はないと考えています。

このような研究会に参加し、修練を積み、皆様のお役に立てるように
していきたいと考えます。

信託受益権の売買による所有権移転登記のスキーム

信託対象不動産の受益権を売買し、信託契約を解除することによって所有権を受益者に移転するという不動産所有権移転スキームが用いられることがあります。

先週行った登記手順はこうです。

①登記簿上の受益者が受益権を売却し、買主への「受益者変更」登記を申請する。
②受託者と新受益者とで信託契約を合意解除し、その結果として、「所有権移転」登記と
「信託抹消」の登記を申請する。

所有権移転登記をする際、登記原因は「売買」ではなく「信託財産引継」となります。
信託条項の中で、「信託契約が終了したら、受託者は受益者へ所有権移転の登記をする」という趣旨の定めがあり、これに基づいて所有権移転しているからです。

ちなみに「売買」を原因とする土地の所有権移転の登録免許税率は1000分の15ですが、
「売買」以外の登記原因である「信託財産引継」は1000分の20です。

法定相続情報一覧図を作成しました

昨年の5月から運用が開始された法定相続情報。
遅ればせながら、昨日作成してきました。

法定相続情報一覧図を事務所で作成し、
法務局でその一覧図を証明文書にしてもらいます。
申請する法務局には管轄があります。
(1)被相続人の本籍地
(2)被相続人の最後の住所地
(3)申出人の住所地
(4)被相続人名義の不動産の所在地

一発目の作成だったので、地元の尼崎支局が良かったのですが、
管轄が合わず、北大阪支局へ行ってきました。

今まで相続登記で作成していた相続関係説明図とは少し形式が
異なります。
これで法定相続情報を作成するポイントは掴みました。

信託実践研究会に参加してきました

昨日、「株式会社トータル財務プラン」が主宰する
「信託実践研究会」に参加してきました。
金融機関、不動産関係など様々な分野のプロ集団が集まっての研究会で、
特に講義が終わったあとの情報交換会では、実践の名にふさわしい
興味深いお話を聞くことができました。

民事信託とは、資産を持つ人が信頼のできる家族などに資産を預け、
「高齢者や障害者のための財産管理」や「柔軟な資産承継対策」を
実現しようとする財産管理方法のうちの一つです。

以前ご夫婦で相談に来られたお客様の話です。
お客様には子供がおられず、夫婦それぞれの財産の承継方法
についてのご相談でした。
遺言書、任意後見、財産管理契約など様々な提案をさせて頂きましたが、
どれも今ひとつピンときません。
そこで信託という方法がありますよと紹介させて頂いたところ、こんないい方法が
あるのかとすぐに決断して頂きました。
リスクはないのかと逆にこちらが心配したほどです。

信託という方法を使えば、もっともっといろいろなことができそうな気がします。

さらに深く検討していきたいと思います。

権利証書がない時の対処法~事前通知~

所有権移転登記を申請するには、売主は登記識別情報、いわゆる「権利証書」が必要です。
しかし「権利証書」を失くしてしまっている場合、どうすればいいのでしょうか。

どんな事情があっても、権利証書の再発行はできません。

その1 司法書士が「本人確認情報」を作成する
権利証書の再発行はできませんが、司法書士がそれに代わるものを作成して、
登記申請を進める方法です。
司法書士が売主様と直接お会いして、免許証などを確認して本人確認をする
というものです。

その2 「事前通知制度」を利用する
権利証書がない状態で登記申請をします。法務局から売主様宛への「本人限定
受取郵便」にて、登記申請があったがこれが真実かどうかの問い合わせが事前に
通知されます。

私が遺言執行者として、遺贈による所有権移転登記手続きを行っているのですが、
不動産の権利証書がありません。そこで普通なら本人確認情報を作成する所なのですが、
登記義務者は遺言執行者である「私」、登記申請代理人も「私」、自分が自分で本人確認情報を
作成するのも変な感じがしたので、今回は「事前通知制度」を利用しました。

今から、法務局へ「事前通知に基づく申出書」を持参してきます!

韓国籍の相続登記~外国人登録原票の取得~

最近取り扱った、韓国籍の方の相続登記のお話です。

まず韓国から戸籍謄本を取り寄せることから始めます。
取り寄せた戸籍はハングル文字なので、それを翻訳します。
それで相続人が確定できたら、あとは日本人の相続手続きと
同様に、遺産分割協議書などを作成して、登記申請します。

さて今回のケース。
取り寄せた戸籍だけでは相続人が確定できませんでした。

そこで参考資料となるのが、外国人登録原票です。
外国人登録原票の記載事項に、
「世帯を構成する者(続柄・氏名・生年月日・国籍)」があります。
この記載事項をもって戸籍で不足していた情報を補うことができる
ケースがあります。

ところがこの外国人登録原票。法務省入国管理局で一括管理
されているので、取得するのに請求してから1カ月近くかかります。
急いでいる場合には注意が必要ですね。