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カテゴリー別アーカイブ: 不動産登記

外国の方の住民票~外国人登録原票~

外国の方の住民票についてのお話です。

現在は日本人も外国の方も住民基本台帳法が適用されておりますので住所は住民票で確認します。
ところで、外国の方に住民基本台帳法が適用されるようになったのは、平成24年7月(2012年)からで、それ以前は外国人登録制度に基づいた書類が作成されておりました。

何が問題か。
外国の方の住民票は、法改正があった平成24年7月以降の事実しか記載されていません。
平成24年7月以降に住所変更した場合には、住民票を取得すればその事実を確認することができます。
しかし平成24年7月以前に住所変更している場合、住民票を取得してもその事実を確認することはできません。
どうやって確認するか。
外国人登録原票」を取得して確認することになります。
出入国在留管理庁総務課情報システム管理室出入国情報開示係に郵送請求することにより取得します。
取得するには1ケ月程度かかりますので、必要な場合には早めの準備が必要です。

請求してみなきゃ分からんぞ~住民票の除票・戸籍の附票~

相続登記手続において、住民票の除票や戸籍の附票を取り寄せます。

以前は、住民票の除票、戸籍の附票の除票の保存期間は5年間とされていました。
5年を超えた住民票の除票、戸籍の附票の除票は廃棄されていました。

ところで先日えっ?なことがありました。
平成25年に除籍となった戸籍の附票は5年経過により廃棄されました。
ところが平成21年に原戸籍となった戸籍の附票は廃棄されておらず、
取得することができました。(同じ戸籍の話です)

あと役所によって取れたり取れなかったりすることもあるように思います。
尼崎市はきっちり廃棄してくれておりますが・・・

なので、5年経過しているからもう廃棄されているかなとあきらめずに、
全て出してくれとまずは請求してみて下さい。
あきらめたらそこで終わりですよ~

ちなみに法改正により、現在の保存期間は5年から150年に延長しております。
(令和元年6月20日)
ただ廃棄されてしまったものは復活しません。

登記原因「委任の終了」って何?

とてもマイナーな話です。

不動産の名義を変更する時、変更する原因を登記する必要があります。
「売買」したから名義を変更する、
「贈与」したから名義を変更する、
「相続」が発生したから名義を変更する、
といった具合に、登記名義を変更するためには何らかの原因が必要です。

いくつかある登記原因のうちの一つに「委任の終了」というものがあります。
見慣れない登記原因で、私も1、2回しかお目にかかったことがありません。
その「委任の終了」を登記原因とするお仕事を頂戴しました。

不動産の登記簿に登場することができるのは、「個人」か「法人」です。
法人は法務局で登記されており、法人登記簿でその実体を証明することができます。
個人は住民票や印鑑証明書で実体を証明することができます。

ところで世の中には個人でも法人でもない集合体があります。
すぐに思い浮かぶのは町内会とか自治会ですね。
自治会が土地や建物を所有していても、自治会の名前で登記をすることはできません。
代替手段として自治会の代表者個人の名前で登記をすることになります。
そして代表者が交替する時、「委任の終了」を登記原因として名義変更の登記をします。
代表者が死亡した場合でも、その子供に相続登記をすることはできず、
新代表に「委任の終了」を原因として名義変更をします。

以上「委任の終了」のお話でした。

不備のある自筆証書遺言の登記

相続登記のご依頼を頂きました。
自筆証書遺言を持参されていたので、その確認です。

署名あり。
日付あり。
押印あり。
全文手書きされている。
不動産の特定がしっかりできている!
裁判所の検認手続き済み。

何の問題もなさそうです。
しかし、遺言の中身をじっくり読んでいると一つ分からない点が出てきました。
遺言書には、不動産は妻と二男に相続させるとあるのですが、その割合の記載が
ないのです。
登記をする際には持分の記載が必須です。
割合の分からない遺言書に基づいて相続登記をすることはできるのでしょうか。

割合の記載がないということは、妻と二男に2分の1ずつ相続させる
と推測することが常識的でしょうか。
管轄法務局に照会したところ、2分の1ずつの持分で登記してもよいという
回答を得ました。

本件ではどうしても相続手続きに関与して欲しくない人物がおり、
その人物の了承が必要だとかなったらややこしいなと思っていたので、
自筆証書遺言のみで登記手続きを進めることができて一安心です。

相続人の配偶者が中国籍の方の相続登記手続き

中国籍の方が亡くなった場合の話ではなく、
日本人が亡くなり、中国籍の方が相続人になった場合の相続登記手続きのお話です。

今回は、日本人である夫が亡くなり、中国籍の妻が夫を相続したというケースです。
亡くなった夫の出生から死亡時までの戸籍を取得していきます。
夫の戸籍には中国籍の女性と婚姻したという旨の記載はされますが、
中国籍の妻は戸籍に入ることができません。
中国籍の妻に関して、どこまでの書類を揃えればいいのでしょうか。

中国籍の妻の住民票を取得します。
夫の戸籍には、配偶者の氏名・生年月日・国籍が記載されており、
妻の住民票にも上記と一致する情報が記載されています。
これだけでいいのかなと思いながら、住民票は住所の証明であり、婚姻関係の証明ではないと言われればそれまでなので、外国人登録原票を取得することにしました。

外国人登録原票には以下の情報が記載されます。
①氏名②性別③生年月日④国籍⑤職業⑥旅券番号⑦旅券発行年月日⑧登録の年月日⑨登録番号⑩上陸許可年月日⑪在留の資格⑫在留期間⑬出生地⑭国籍の属する国における住所又は居所⑮居住地⑯世帯主の氏名⑰世帯主との続柄⑱勤務所又は事務所の名称及び所在地⑲世帯主である場合の世帯を構成する者(世帯主との続柄,氏名,生年月日,国籍)⑳本邦にある父・母・配偶者(⑲に記載されている者を除く。氏名,生年月日,国籍)㉑署名㉒写真㉓変更登録の内容㉔訂正事項

以上から分かるように、外国人登録原票には配偶者に関する事項が記載されます。
これをもって婚姻関係を証明することができます。

実際の相続登記では、この外国人登録原票を添付して無事登記申請は完了しました。
中国領事館へ行って、婚姻に関する書類を取得する必要はありませんでした。

ちなみに外国人登録原票の請求先は以下のとおりとなります。
出入国在留管理庁総務課情報システム管理室出入国情報開示係
〒160-0004 東京都新宿区四谷1-6-1 四谷タワー13F
電話:03-5363-3005
取得には1ケ月程度時間がかかるので、余裕をもって準備する必要があります。

所有者不明土地の隣接地が売買しやすくなる

所有者の不明な土地に隣接する不動産の売買が行いやすくなります。

所有者が土地を売却する場合、隣接地の地主と「筆界確認書」と呼ばれる
境界を確認する書類を取り交わすのが一般的です。
その際、隣接する地主の記名・押印が必要になりますが、
隣接地が不明の場合、筆界確認書を取り交わすことができません。
そこで「筆界特定制度」が利用されてきましたが、
この制度、費用に加え時間がかかるという問題がありました。

この課題に対し、以下のような緩和策が考えられています。
・法務局が土地の境界情報を持っている場合、所有者不明の土地が隣接するときなどに
書類の提出を省くことができる、
・隣接地が相続を通じて複数人で共有している場合、全員でなくても探すことのできた
所有者から承諾を得れば確認書の効力を認める

この対策により、所有者の不明な土地に隣接する不動産を売買しやすくし、
所有者不明の土地が増えるのを見据えて土地取引の滞りを防ぐねらいです。

法務省は2022年度中の運用を目指しています。

配偶者居住権 メリットとデメリット

登場人物 父・母・子
父が自宅所有 家の価値が2000万円とします。
これでお父さんが亡くなった場合

配偶者居住権のメリット
お母さんが、法定相続分で、お金をより多くもらえることです。
配偶者居住権の財産価値は、お母さんの年齢により平均余命を勘案して決められます。
例えばお母さんが、
65歳なら半分くらい(約1000万)
80歳なら30%くらい(約600万)
90歳なら15%くらい(約300万)
これを無償で相続するので、
お母さんが家を配偶者居住権で相続すると、より多くのお金を相続できるということになります。

配偶者居住権のデメリット
1.認知症対策
配偶者居住権は登記されます。もしこの家を売却する必要が出てきた場合、この配偶
者居住権をお母さんが放棄し、登記を抹消する必要があります。この時、もしお母さ
んが認知症だった場合、配偶者居住権を放棄して、抹消登記をすることができなくな
り、家の売却手続きが進まなくなってしまいます。

2.税務上の問題
お母さんが配偶者居住権を放棄した場合、配偶者居住権分の価値を子がお母さんから
贈与を受けたという考え方になると思います。
まだ事例がないので何とも言えませんが、贈与税が発生する可能性はあります。

いずれにせよ、不動産を売却する可能性がある場合、配偶者居住権には注意が必要かもですね。

配偶者居住権

令和2年4月1日以降に発生した相続について、配偶者居住権制度が開始しました。

被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合、
その居住していた建物の全部について無償で使用及び収益をする権利を取得するとされました。これが配偶者居住権です。

ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあってはできないなどの条件があります。

そして配偶者居住権の登記もできるようになりました。
権利者:配偶者、義務者:建物所有者とする共同申請です。

自己借地権の登記

A所有の土地に、Aを借主とする借地権(自己借地権)を設定して登記をすることはできません。

そしてA・B共有の土地に、BがA持分のみに借地権を設定して登記することもできません。この場合は土地を分筆して登記をすることになります。

例外的に自己借地権が認められる場合があります。
借地借家法15条に基づく場合です。
要件は以下のとおりとなります。
① 建物の所有を目的とすること
② 他の者と借地権を共有すること

利益相反 取締役会議事録の作成

代表取締役が個人で所有している不動産を、会社が購入する事案です。
ちなみにこの会社は、取締役会設置会社です。

代表取締役と会社が直接取引する場合、会社法365条により、
取締役会での承認決議が必要となります。

会社の役員構成
代表取締役 A
取 締 役 A B C D E F

1.取締役会決議には何名以上参加すればいいでしょうか。
法律では、「議決に加わることができる取締役の過半数が出席し」
とあります。
代表取締役Aは議決に加わることができません。
よって残りの5名の過半数である、3名以上の出席が必要となります。

2.次に決議に参加した取締役のうち、何名以上の賛成が必要でしょうか。
法律では、「出席した取締役の過半数をもって行う」
とあります。
よって3名が参加していれば2名以上の、5名全員が参加していれば3名以上の
賛成が必要となります。

3.取締役会議事録への押印について
決議に参加した取締役は実印を押印し、印鑑証明書を添付します。
なお、代表取締役Aが参加している場合は、Aの押印は会社の実印と
会社の印鑑証明書を添付することになります。

この案件を頂いたとき、税理士が取締役会の議事録を作成していのですが、
監査役が決議に参加しておりました。
この会社の監査役の権限は会計に関するものに限定されていたため、
そもそも決議に参加することができず、承認決議する人数にもカウントされません。
この監査役をカウントしないと、有効な決議にならなかったため、
慌てて議事録を作成し直したというおまけ付の事案でした。